世界中で今話題になっているベーシックインカムって何?

ベーシックインカム

ZOZOの元社長前澤友作さんが2020年に行った100万円を抽選で1000人に配るお年玉企画を覚えていますか?

実はあの企画はベーシックインカム実現へ向けた社会実験でした!と明かされたことで、「ベーシックインカム」という言葉を知った人も多いのではないでしょうか。

近年のSDGsへの取り組みの必要性が高まったことで、「貧困解消」「経済成長と働きがいの両立」へのアプローチとして世界的にベーシックが注目されています。

日本でも、経済成長の鈍化やここ数年のコロナウイルスによる生活や経済への閉塞感に対する打開策の一つとして、ベーシックインカムの議論が活発になってきています。

ベーシックインカムとは

 

ベーシックインカム=生活に最低限必要なお金を国が無条件に国民全員に給付する制度のこと。世帯ごとではなく、赤ちゃんからお年寄りまでの個人に生涯毎月現金が給付されます。

生活に対する補助と聞くと生活保護が思い浮かびますが、生活保護は受給までに収入や資産などの審査と条件があり、地域や年齢によって給付額が異なります。

ベーシックインカムは、「無条件」「国民全員に一律」という点が決定的に生活保護と違う点で、生活保護からこぼれ落ちる人や生活保護の穴を埋められる可能性も期待されています。

ベーシックインカムとして給付される金額は月5~10万円が想定されていて、非課税の給付になります。そのままこの金額が生活に上乗せされるイメージです。

ベーシックインカムのメリット・デメリット

 

ベーシックインカムのメリットデメリット

メリット

◦貧困を解決へのアプローチとして有効

◦少子化に歯止めがかかる

◦地方活性化への一手

◦お金があればできるのに…を解決

などがあげられます。以下で詳しく見ていきましょう。

1.貧困を解決へのアプローチとして有効

日本では物価は上がっているのに賃金は25年間上がっていないというニュースが最近話題になりました。働いても働いても低所得、将来の見通しが立たないという人は少なくありません。

一度貧困に陥ると抜け出すのはなかなか難しい上に、貧困は連鎖していくので親が貧困だと子供も貧困という状況が生まれやすくなります。

低所得者層にとってはベーシックインカムは生活の安定や、貧困からの脱却をもたらしてくれる効果が期待できます。

また、生活保護は受給中に収入が上がると支給額が減ってしまうので、ここまでしか働かないでおこうとなりやすく収入に天井ができてしまうデメリットがあります。

その点ベーシックインカムは非課税で、収入による支給額の変動がないことがメリットです。

2.少子化に歯止めがかかる

ベーシックインカムの特徴は赤ちゃんからお年寄りまで全員に給付されることです。このことから、少子化対策に繋がることが期待されています。

子供が生まれて人数が増えれその世帯がもらえる総額が増えるので、子育てのハードルが下がりそうな気がします。

3.地方活性化への一手

ベーシックインカムは居住地域による給付額の多寡はありません。そのため、なるべく物価の安い地方で暮らすことで支出を減らすという選択をする人が見込まれます。

都市への人口流入を抑え人口流出が続く地方活性化の手がかりになるかもしれません。

4.お金があればできるのに…を解決

進学、資格の取得、趣味など新しいことを始めようと思ってもお金がかかる!日々の生活で精一杯だったり、将来への不安から貯蓄に回したいと思うと、生活費以外の出費はためらいがちです。

また、好きな仕事をするために勉強をしたいと思っても、日々の生活を維持するために働き続けなければいけません。しかし、ベーシックインカムがあれば最低限の収入は確保されるので勉強に集中することができ、結果的に職業選択の幅が広がる可能性があります。

デメリット

◦ギャンブルや依存症を加速する

◦毎月お金がもらえたら働らかなくなりそう…

◦100兆円もの財源をどうやって確保するのか

などがあげられます。以下で詳しく見ていきましょう。

1.ギャンブルや依存症を加速する

デメリットの一つとして、パチンコなどのギャンブルやアルコールなどにお金を回す人が増えるのではないかという心配です。

ベーシックインカムの使い道は個人の自由なので、依存症の加速や新たに依存症の人を作り出してしまう可能性があります。

2.毎月お金がもらえたら働らかなくなりそう…

ベーシックインカムの月額として想定されているのは月5~10万円。住む場所や生活レベルは置いておいて確かにこの金額で生活出来てしまいます。

そのため、働くモチベーションが下がり生産性も低下するのではないかという心配があります。

3.100兆円もの財源をどうやって確保するのか

例えば、毎月7万円を日本国民1億2000万人に給付するとなると約100兆円必要になります。

莫大な財源の確保は簡単なことではありません。カナダでは、ベーシックインカムの社会実験が試みられましたが、実験段階で財源の壁にあたり頓挫しています。

また、財源確保のため大幅な増税や社会保障の統廃合案もあり、その点をどう捉えるかも議論のポイントです。

実は日本でも行われているベーシックインカム議論

 

日本経済

ZOZO元社長前澤さんの社会実験

冒頭でも触れた前澤勇友作さんによる社会実験がとてもおもしろいと思ったのでご紹介します。

https://www.yusakumaezawa.com/

2020年1月にTwitter 上で「前澤友作お年玉企画」の呼びかけをリツイートした約 403 万人から、約 1000 名を完全ランダムで抽選し、当選者には現金100 万円を配布。給付に当たっては年齢や所得などの条件は一切設けられませんでした。

実験方法:調査対象を4つのグループ分け、計17回のアンケートを1年間実施。

Group1 100万円を4月に一括受け取り(250名)

Group2 100万円を10月に一括受け取り(250名)

Grop3 100万円を1年間分割で受け取り(500名)

Group4 100万円は受け取らないが社会実験には参加(78117名)

現金給付によって人々の行動や価値観がどう変化するのかに焦点を当て、ベーシックインカムの実現可能性を探る実験です。

調査結果

資金の都合で挑戦を諦めた経験がある:85%

もし、その時100万円があれば挑戦していた:45%

資金の都合で諦めたこと:起業/大学進学/資格/旅行/留学/結婚式/専門学校/開業etc

100万円当選者の意識が向上したこと:起業3.9%/結婚3.1%/留学2.3%

100万円の給付によって幸福度が大きく向上した人:70%

当選者と非当選者の離婚率:当選者0.6%/非当選者1.5%

ベーシックインカムと離婚率の関係も調べられていたりと新しい視点が盛り込まれていて面白いですね。

この結果を見て、お金の余裕と幸福との関連度が高いことに驚きました。やはりお金の余裕は心の余裕を生むのだなと実感。

世界で行われているベーシックインカムの実験は多くが政府主導のものなので、個人が行うのはかなり珍しいのではないでしょうか。前澤さんすごい。

ベーシックインカムは生涯にわたっての給付であるのに対し、この実験は1年間で1回限りの給付であるため正しいベーシックインカムの効果を図れるのかという議論はありますが、お金の余裕感によってよりハッピーな生活を実現できる可能性を示してくれた点は意義のある実験だったのではないかなと感じました。

この調査は今後も続けていくようなので、どのような結果が出るのか注目したいと思います。

提言する政党

前澤さんの実験からは前向きな結果が伺えますが、実際に国の政策として実施するためは財源の確保など様々な壁があります。

実務的にベーシックインカムを実現することは可能なのでしょうか。

日本では

◦国民民主党

◦日本維新の会

がベーシックインカム導入を掲げています。

国民民主党「日本型ベーシックインカム(仮称)」

給付と所得税減税を組み合わせる給付付き税額控除を提言。マイナンバーと銀行口座の紐づけを行うことで行政の負担を軽減しながら迅速な振込を行うとしています。

ベーシックインカムと銘打っていますが、内容としては給付付き税額控除のようです。

給付付き税額控除とは、所得に応じて給付または税額控除を行う制度のこと。一定以上の所得がある場合は決められた額を税額控除として差し引き、所得が水準に満たない場合は差額が現金で給付されます。つまり、所得が低いほど給付額が多くなる仕組みです。

全国民に一律ではなく、所得に応じた給付体制にすることで低所得者に重心が置かれた制度になりそうです。

日本維新の会「チャレンジのためのセーフティネット」

給付付き税額控除またはベーシックインカムを基軸とし、社会保障全体の改革を掲げています。

ベーシックインカムを導入する代わりに、基礎年金をベーシックインカムに統合し、生活保護の一部や児童手当を統合・簡素化。歳入庁を設置しマイナンバーカードフル活用によって漏れの多かった税や社会保険料を徹底徴収し財源を確保。

消費税・所得税・法人税を減税し経済を活性化による税収増加で財源確保を目指すとのことです。

システムについては国民民主党同様マイナンバーカードと銀行口座の紐づけを行うことで、行政の負担軽減を図ります。

増税ではなく、減税によって財源の確保を目指すのは日本維新の会ならではの主張ですね。

海外でも実験が行われていた!実験を行っている主な国

 

外国

現在ベーシックインカムを実際に導入している国はありませんが、ここ数年世界各国でベーシックインカムの社会実験が始まっています。ベーシックインカム導入に向けた盛り上がりを感じます。

◦アメリカ

◦フィンランド

◦ドイツ

◦スイス

1.アメリカ

カリフォルニア州で抽選で選ばれた125名に毎月500ドル(約5万円)を2年間給付。

この実験の特徴は、低所得者を対象としていることと、デビットカードへ振込をすることで使用用途を追跡していることです。

この実験を1年間行った結果、不安感の解消、健康状態の改善・向上、急な支出に対して前よりも簡単に対応できるようになった、新しい機会に対して将来の目標設定や挑戦するリスクをとれるようになったことが報告されています。

また、受給者のフルタイム雇用率が12%増加したとのことです。

ベーシックインカム導入のデメリットとして、ギャンブルやアルコール依存症への懸念がありましたが、主な使用先は公共料金や日用品、交通費などで、たばこやアルコールへの出費は1%以下。

そもそも日常生活に困窮している層への給付だったので生活に必要なものへの支出にとどまったのではないかと考えられますが、意外とギャンブルやアルコールに入れ込むという人はいないようです。

2.フィンランド

フィンランドでは2017年から2018年にかけてベーシッインカムの社会実験が行われました。25歳から58歳までの失業手当受給者2000名を対象に毎月560ユーロ(約6万円)を2年間支給しました。

この結果、非ベーシックインカム受給者よりも受給者のほうが生活への満足度が高く、精神的なストレスが低い傾向がみられました。また、アメリカの実験結果同様、将来への期待を持てるようになったとのことです。

心配される労働意欲の低下については、非ベーシックインカム受給者の平均労働日数は73日だったのに対し、受給者は78日と、わずかではありますが受給者のほうが働いているという結果でした。

3.ドイツ

2021年から始まった実験で、抽選で選ばれた120人に3年間にわたり月1200ユーロ(約16万円)を給付。

資金はクラウドファンディングで集められ、ベーシックインカム受給者の生活や価値観がどう変化するのかを検証する実験です。

まだ実験は始まったばかりなので具体的な数値などは出てきていませんが、この実験対象に選ばれ実際にベーシックインカムを受給した人たちからは、慢性的な病気の治療を行うことができた、低賃金の職から教師へとジョブチェンジができたなどポジティブな声が上がってきているようです。

4.スイス

なんとスイスでは2016年にベーシックインカムの導入に対し国民投票が行われています。

提案されたのは成人2500スイスフラン(約27万円)、未成年625スイスフラン(約6万8千円)を毎月給付する案です。

結果的には財源の問題などから反対76.9%で否決されてしましたが、新型コロナウイルによって多くの国民が経済的打撃を受けたことによりベーシックインカム導入の機運が再度高まっています。

否決に終わったものの、国民投票が行われほど関心が高まっていることがよく分かる例ではないでしょうか。

4か国の実験を見て、お金に余裕が生まれることによって、目の前の一日一日だけではなく将来も見通せるようになると逆に労働意欲が上がるんじゃないかなと感じました。

現在も実験が続いている国もあるので、今後も注目です。

さいごに

各国でベーシックインカムの社会実験が行われていますが、その国によって対象が限定的であったり、実験期間が短かったりと様々なので、総合的にベーシックインカムは本当に有効なのかを見ていかなければいけないなと感じました。

今回見た調査では、お金の余裕がQOL(Quality Of Life)や幸福度に繋がることは間違いないことがよく分かりました。

また、前澤さんの実験で、資金がなくて諦めたこととして、起業・大学進学・資格・留学・旅行などがあげられていたのを見ると、確かにベーシックインカムを導入するのは財源がかかりますが、一人一人の能力の底上げや資金が消費に回ることによる社会への還元が期待できるのではないかと感じました。

日本で導入される日は来るのか。期待が膨らみます!

Mayuko Shirai

Web writer

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社会人になってから文章に触れることの楽しさに気づき、食品会社勤務から憧れのwebライターに。株式会社SpoonではSEOとwebライティングを担当しています。趣味は小説と政治経済の本を読むことです。美味しいものを食べるために筋トレも頑張っています!

Posted by Mayuko