【Amazonオリジナル作品】笑えるだけじゃない!マーベラス・ミセス・メイゼルの魅力に迫る。
2018年の第70回エミー賞で、「プライムタイム・エミー賞」のコメディーシリーズ部門最多5冠を獲得したAmazonオリジナル作品『マーベラス・ミセス・メイゼル』をご存じでしょうか。
2017年に配信開始。アメリカではドラマの世界観を再現したポップアップが開催されるなど大人気のコメディドラマです。
人種・政治・ジェンダーなどの社会への問題提起、ロマンス、ファミリードラマ、友情物語というコメディ以外の要素も盛りだくさんで今までにない本当に濃いドラマです。
一人の女性の人生の戦いや葛藤がユーモラスに描かれていて、コメディとして面白いだけでなく、とても勇気づけられる作品です。
今回はそのマーベラス・ミセス・メイゼルの魅力をご紹介します。以下ネタバレ注意です。
あらすじ
1958年ニューヨーク。高級住宅地アッパーウエストサイドで夫と子供たちと4人で暮らすユダヤ系の主婦のミッジ・メイゼル。華やかな生活、完璧な暮らし。
ところが、仕事の傍らコメディアンを夢見る夫のジョールが夜な夜なネタを披露する小さなパブ「ガスライト」のステージで大失敗。ミッジに八つ当たりしたジョールが浮気を告白しその夜家を出ていったことでミッジの生活は崩壊してしまいます。
悲しみと怒りに任せてジョールと同じガスライトのステージに立ち不満をぶちまけたところ観客に大ウケ。それがきっかけで、ガスライトの従業員でありコメディアンには目が肥えているスージーに才能を評価されます。
スタンドアップコメディに魅せられたミッジは、マネージャーとなったスージーとともにスタンドアップコメディの道を目指すことに。
女性のコメディアンはほとんどいなかった時代。業界や社会の古い価値観と闘いながら、一人の女性がショービジネス界を駆け上がる様子を描いた物語です。
「マーベラス・ミセス・メイゼル」 |
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個性豊かなキャラクターを演じるキャスト
この作品は、出てくる役がみんなユーモアです。そこかしこでジョークが飛んでます。
そんな個性豊かなキャラクターとその役を務めるキャストたちを紹介します。
レイチェル・ブロズナハン
主人公のミリアム(ミッジ)・メイゼル役。
1990年生まれ。アメリカの女優。2013年にはネットフリックスのオリジナルドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』に出演し、2015年のエミー賞ゲスト女優賞にノミネートされた注目の女優さんです。今作『マーベラス・ミセス・メイゼル』では、第75回・76回ゴールデングローブ賞女優賞と第70回エミー賞主演女優賞を受賞しています。叔母はケイト・スペード。
裕福な家庭で育ったお嬢さまのミッジ。好奇心旺盛で怖いもの知らず。とにかく口達者で明るくて可愛らしいというミッジをレイチェルが見事演じています。
ミッジは夫と離婚するのですが、その直後酔った勢いで教会で式を挙げ再婚状態になってしまいます。せっかく前に進もうとしていたのに…また離婚手続きをしないと…と落ち込む様子を見せたのもつかの間、その日のステージで「さて、別れた夫と再婚したひとはいる~?」と速攻ネタに変えていきます。ミッジのステージでは、それもネタにしちゃうの!?といつも驚かされます。
様々なドレスや洋服を着こなしながら、時に過激なジョークも飛ばすパワフルでキュートなミッジに注目です。
マイケル・ゼゲン
ミッジの夫ジョール役。
1979年生まれ。アメリカの俳優。アメリカのユダヤ系の家庭に生まれます。テレビドラマ『ウォーキング・デット』、映画『フランシス・ハ』などに出演。
ジョールは打たれ弱く、秘書と浮気をした上に子供を置いて家を出てしまいます。正直最初のほうはジョールはいいところがないのですが、シーズンが進むにつれ成長していきます。
離婚後もミッジが巡業中は子供を預かって面倒を見たり、離婚裁判に付き添ったりと寄り添い続けます。ちなみにこの時代は夫が子供の面倒を見るのはかなり珍しいことだったみたいで、ドラマの中でも「夫が子供を預かってくれるの?近代的ね」と言われるシーンがありました。
トニー・シャルーブ
ミッジの父エイブ役。
1953年生まれ。アメリカの俳優。映画やドラマに多数出演していて、舞台でも活躍する俳優さんです。2002年から2009年に放送されたアメリカのコメディドラマ『探偵モンク』で主演を務めた際には、エミー賞コメディシリーズ部門主演男優賞を受賞しています。
エイブはコロンビア大の教授で数学者です。とても頭がいいのに、人の話を全く聞いていなくて時々ボケていたり、皮肉たっぷりのジョークは日常茶飯事。
学生時代は活動家として反政府活動をしていたこともあり、様々な歴史ネタ、政治ネタが繰り広げられます。
新聞に自分の書いた批評が掲載された時には大喜びして、孫の大事な儀式そっちのけで参列者に新聞を配りまくったり、メイドのマッシュポテトのよそい方が自分だけベチャッとしている!といじけたりかなりお茶目です。
シリアスからコメディまで演じてきた俳優さんというだけあって、エイブの父親としての面と活動家としての面、お茶目なところなど演じ分けがとても上手です。
個人的にはエイブが1番好きなキャラクターです。
マリン・ヒンクル
ミッジの母ローズ役。
1966年生まれ。アメリカの女優。タンザニアで生まれ、その後マサチューセッツ州ボストンへ。『Dr.HOUSE』や『アイ・アム・サム』などのテレビドラマで活躍しています。
ローズの見た目は上流階級のマダムそのもの。学生時代はパリでアートを勉強していたという設定から来る上品な振る舞いもマリン・ヒンクルが完璧に表現しています。
これまで用意された人生を歩んできたローズ。女性らしさを大切にしているローズはコメディアンを目指すという娘に頭を悩ませ言い争いをしながらも、ミッジの影響で自分のビジネスを始めたり、実家の会社の取締役会に女性は入会できないと知り今までもらっていた信託基金を手放したりと徐々に自立への道を進みます。ミッジに影響された人たちが人生を変えていくのも見どころですね。
アレックス・ボースタイン
ミッジのマネージャー、スージー・マイヤソン役。
アメリカのユダヤ系の家庭に生まれます。テレビドラマ・映画・テレビアニメなどで幅広く活躍。1997年から2009年にかけて放送されたアメリカのコメディ番組『マッドTV!』ではプロデューサー・脚本家をしながらコメディアンとして番組に出演するなど多彩な女優さんです。今作でエミー賞助演女優賞を受賞しています。
小さなステージのあるパブ「ガスライト」で働くスージー。ある夜ミッジのステージを目撃したスージーはミッジの才能を確信し、マネージャーになります。
ミッジを売り出そうと奮闘するものの、タイプライターで作った名刺や予定表はスペル間違いだらけだったり、とにかく口が悪かったり、ミッジの稼いだお金をギャンブルにつぎ込んでしまったりと不安になるマネージャーっぷりです。
結構身長の低い女優さんが演じているからなのか、ミッジのために走り回る姿がなんだか見ていて愛おしくなってきます。
ルーク・カービー
大物コメディアン、レニー・ブルース役。
1978年生まれ。カナダ出身の俳優。10代の頃から演技を始め、『ゴシップ・ガール』など多数のドラマや』映画で活躍しています。今作ではゲスト俳優に対するプライムタイムエミー賞を受賞しています。
実はこのルーク演じるレニー・ブルースは実在するスタンドアップコメディアンです。1950年代後半から1960年代前半にかけて、それまでタブーだった政治・宗教・人種差別・性などにコメディで切り込んでいくことで人気になりました。過激なショーであったため警察から目を付けられ何度も逮捕されています。その後は40代でモルヒネ中毒で亡くなっています。
作中では、ミッジは留置所でレニーに出会い何度逮捕されてもコメディが好きだと言う(正確には「コメディが好き」とは言っていなくて、レニーなりの皮肉で答えています。)レニーを見て、コメディアンになる決意をしたくらいミッジに影響を与えた人物です。
ひょうひょうとしていていつもふざけているのに、コメディへの情熱や批判されることへの孤独感を強く見せるレニー。時々見せるシリアスな雰囲気で作品に緊張感が生まれアメリカ社会の抱える問題が浮き上がってくるような気がします。
以上主要なキャラクターとキャストを紹介しました。
ここがおもしろい!
この作品には色々な要素が詰まっています。まず、とにかく映像とファッションが可愛い!50年代60年代の世界観やファッションが忠実に再現されているので見ていて飽きることがありません。
そして最大の魅力は、ミッジの生き様と言葉です。夫との離婚をきっかけにスタンドアップへ挑戦しますが、完全に男性社会であるコメディ業界の高い壁に当たります。
その葛藤を笑いに変えて、前向きに進んでいく姿は多くの女性に勇気を与えてくれます。
美しい色使い、可愛らしいファッション
この作りこまれた世界観。映像を眺めているだけでも楽しめちゃうのが魅力です。
シリーズを通して、50年代から60年代のアメリカのファッションやメイクが再現されていています。
この時代はアメリカ経済が好景気を迎えたこともあり、ファッションもメイクも豪華で華やか。ドラマでは、洋服や家の内装などカラフルで可愛らしいものばかりです。
パステルカラーが多用されているシーンがいくつかあるのですが、コメディとフェミニンさの融合が新しくてそこが個人的には1番好きなシーンです。
ミッジは何百着も洋服や帽子を持っていて、ひと夏を過ごすキャッツキルでは毎日違う服を着るというこだわりっぷり。実際に映像でもミッジが同じ服を着ている日はないでしょうか。さらに、ドレスに合わせて帽子もバックも靴も全身お揃いでコーディネートされているところも注目してみると面白いと思います。
女性をエンパワメントするミッジの生き様
ミッジは自分のプライベートをありのままネタにして話します。その日起きた出来事や家族のことから、自分たちユダヤ人の独特な文化や人種差別問題まで様々ですが、中でも女性として日々感じる不満を上手く拾い上げて社会に疑問を投げかけていて、今を生きる女性へのメッセージにもなっているなと感じました。
ミッジが生きる50年代60年代は、アメリカ社会が大きく変化した時代です。人権意識の高まりから黒人の人権を訴える公民権運動を皮切りに、女性運動が盛り上がりを見せます。
今までは女性は家庭を守る存在で一日中家で子育てや家事をするのが女性の典型的な人生だと言われてきたけど「本当に私の人生はそれだけなの?」という疑問が徐々に膨らみ、ワンパターンだった人生からの脱却を目指したのがこの運動です。
この葛藤がよく分かるシーンを1つ紹介します。
シーズン1、エピソード7コメディ業界の大物ソフィ・レノンから、売れたいなら女性らしさを消して何かの「役」になりきらないとダメと言われます。
しかしミッジは、その夜のショーでこう反論します。「外見がダンプカーの女しか男は笑わない?なぜ女性は何かのフリをしなくちゃいけないの?バカじゃないのに愚かなフリを。困ってないのに無力なフリを求められる。何もしてないのに謝ることを求められる。腹ペコなのにすいてないフリを求められる。ふざけないでソフィ!」
男性は男性のまま成功できるのに、女性はダメなの?
ミッジはソフィからの助言を無視して、可愛いドレスを着てステージに立ち続けます。女性のままでも成功できるんだと示したい。
自分の進みたい道を進むためには、邪魔をする従来の価値観に対抗していくという姿勢は私たちに勇気をくれます。
50年代の話でありながら、今を生きる女性にも共通するテーマとして共感できるところがあるのではないでしょうか。
物語の続き
現在シーズン4まで配信されてるマーベラス・ミセス・メイゼル。物語はシーズン5で終結することが発表されています。
夫との離婚や家族とのいざこざなど様々な出来事に翻弄されながらコメディ業界に進むこと決めたミッジ。徐々にファンも増え仕事も舞い込むように。しかし、信頼していた人からの裏切りや人気が出ることで不自由になっていくことへの葛藤など問題は山のよう。その中で、ミッジは自分が望む道をどう切り開いていくのか。シーズン5に期待です! コメディシーンに新しい風を吹かせたミッジの姿から、仕事や人生を頑張る力をもらえること間違いなしのドラマです。ぜひご視聴ください!Web writer
Mayuko Twitter
社会人になってから文章に触れることの楽しさに気づき、食品会社勤務から憧れのwebライターに。株式会社SpoonではSEOとwebライティングを担当しています。趣味は小説と政治経済の本を読むことです。美味しいものを食べるために筋トレも頑張っています!